今こそ読もう!「学問のすゝめ」第二弾(人生設計の技術)
「学問のすゝめ」とは?
近代日本最大の啓蒙思想家とも言われる福沢諭吉の大ベストセラーです。
国家と個人の関係を見つめ、世のために働くことで自分自身も充実するという生き方を示してくれています。
言わずとしれた名著であり、日本だけでなく世界でも大いに評価されている傑作と言えます。
私は以下の本を参考に読み進めました。日本屈指の教養人として呼び名の高い斎藤孝が現代の人にも伝わりやすい表現で訳してくれています。非常に読みやすいです。
学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書) | 福澤 諭吉, 斎藤 孝 |本 | 通販 | Amazon
「人生設計の技術」とは?
学問のすゝめの第14編からは人生設計の技術に関して論じられています。
ここでの考え方は世のビジネスマンにも重要な考え方ではないかと思います。
・心の棚卸し
この章では冒頭に「心の棚卸し」が必要であると書かれています。これは一体どのような意味を持つのでしょうか?
人間は自分で思っているより愚かなことをする
ここでは、人間が世の中を渡っていくときに、いささか愚かなことをしていると続きます。これは決して、頭が悪いからしているのではないと書いてあるのが非常に印象的です。
成功を企てながら失敗するものをみていると、実に抱腹絶倒のバカをやっているように思えるけれども、それを企てた本人は必ずしも決して愚かでもなく、よくよく事情を尋ねてみれば、それぞれにまたもっともな理由があるものだ。
では、何がその原因となっているのでしょうか?
その原因は事の難易度と時間のかかり方を意識していないことであると書かれています。
世間でことを企てている人の言葉を聞くに、「一生のうちに」だとか、あるいは「十年以内にはこれを成す」という者は最も多い。「三年のうちに」「一年のうちに」という者はやや少なくなり、「一月のうちに」「今日計画して、いままさにやる」という者は、ほとんどいない。
つまり、この後を含めて要約すると、たいそうな計画を立てるのは良いが、期限が近くなって、今日明日と迫ってきてその計画の経過を言えるかな?ということが重要であるようだ。
ここで最初の棚卸しがつながってくる。
人生は思いの他に愚かなことをするし、ことを成せないものである。だから、事業の成否・損得について、ときどき自分の心の中でプラスマイナスの差し引き計算をしてみること。
これが様々な不都合を防ぐ一つの手段であると示されています。
・世話の意味
ここが中々に面白いところでした。人生において人間関係は切っては切れないものですよね。ここでは、そこにおいて重要なポイントを示してくれています。
「保護」と「指図」の範囲は一致させよ
「世話」の意味を紐解くと、「保護」と「指図」となると書かれています。
保護は人がやることを見守って、その人のために時間を費やして利益や面目を失わないようにする。これは、世話とも結びつきやすいですよね。
もう一つの指図(命令)が世話の一つとはどういうことでしょう?
その人のために考えて、その人の利益になるであろうことを指図していることは、世話という意味でもある
私的には指図の方は余計なお世話では?と感じるところですが、福澤諭吉はその保護と指図は同じ範囲を指しているべきであると説いています。
つまり、人間関係において、「保護」と「指図」の両立ができていない世話はよろしくない、とあります。
これは非常に大切な視点だと思います。ある人を思って、とにかく保護して世話をするだけでは行けないのです。それと同じくらいに指図して、自分の道を示してみるのも必ず必要なのです。
過保護な教育は保護に偏っていると考えられますし、友人のことを深く知らないのに厚かましく忠告ばかりするのは指図に偏っています。
「保護」と「指図」の両方のバランスを考えて世話を焼いていくことが良好な関係を構築していくのです。
P.S..
ここでの解釈は私なりの解釈である、ということにご注意ください。
昨今よくある一つのテーマに沿って書かれた自己啓発本と違い、読む人の考え方や背景、はては時代によって理解にも広がりができる本であります。
「その解釈は間違っている!」、「私はこのように解釈したよ」ということあれば、どしどしコメントいただければと思います。
次回は「正しい実行力」について紹介していきます。